Blade Library

ストーリー

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 2012年ロンドン、オスカーピストリウス選手が歴史上初めて義足のアスリートとしてオリンピックに出場した。彼の足には日常用の義足ではなく、カーボンでできた競技用義足が使用されていた。その颯爽と走る姿に魅了され、世界で最速の義足を作ることを目指し、義足アスリート3名ともに株式会社Xiborg(http://xiborg.jp)を始めたが2014年のことだった。

 義足の開発は順調に進み、最新の競技用義足を履いた佐藤圭太選手がリオのパラリンピックの出場を控え、北海道帯広で合宿をしているときだった。
 
「たくさんの子供にかけっこを教えることが多いけれど、一人でも義足の子がいればその子が走れるようにしてあげたい」
 
 何気なく発した一言が後のギソクの図書館の構想に繋がった。
 色々調べているうちに、スポーツをするための板バネと呼ばれる競技用義足で走るということはとても敷居が高く、特に子供にとってはとても敷居が高いことがわかった。それは

  1. 競技用義足は値段が高く大人用も子供用もあまり値段が変わらない
  2. 保険適用外で自費で買わなければならない
  3. 毎年成長して体重や身長が増えるため、作ってもすぐに使えなくなることもある

などが大きな原因としてあげられる。しかし、学校などで体を動かす機会が多い子供は大人よりも日常的に走っている。子供の方が大人より走る機会が多いといえる。

 もう少し視野を広げてみると、走るという行為はなにもアスリートだけでなく、誰もが行う行為でもあり、一番敷居の低いスポーツの1つである。誰もが障害や年齢に関係なく走ることを楽しむことができる社会が2020年東京オリンピックパラリンピックを通してつくられるレガシーの1つになればと思った。

 そんな社会を実現するため、義足ユーザが走るのに現時点でできる限り敷居の低い場所を作ることを考えた。それはスケート靴を借りてその場で滑ることができるスケートリンクのように、競技用義足もその場で付け替えてすぐに走れるような環境だ。さらに、そのアイデアをクラウドファンディングのプラットフォームReadyforに相談し、ギソクの図書館という名前が生まれた。

 実際には板バネ以外にも、膝継手やアダプタなどのパーツや工具も必要であり、何があれば十分なのかをテストするため、当時競技用義足で走ったことのなかった大学生下腿義足ユーザの山下千絵さんと小学4年生(当時)の大腿義足ユーザ斎藤暖太君たちに実際に競技用義足をつけて走ってもらい、揃えるべきものをリストアップした。

 その後、多くの賛同者を得て構想はカタチになった。ギソクの図書館設立のために、Xiborgのメンバーやアスリート、義肢装具士らが中心となり、クラウドファンディングで支援を呼びかけた。その結果、631人から17,533,000円の支援が集まったのだ。2017年10月、新豊洲Brilliaランニングスタジアム内でギソクの図書館がお披露目されると、その取り組みは義足による走り方を教えるイベントなどを通して少しずつ切断者に広がっていった。

 その後、最初のギソクの図書館の体験者である山下千絵さんは現在陸上競技を本格的にはじめ、東京パラリンピックの出場を目指している。また斎藤暖太君は校内のマラソン大会で1kmを板バネで走った。今でも定期的にギソクの図書館を訪れ、走ることを楽しんでいる。

 ギソクの図書館は、2018年12月NPO法人となった。義足ユーザが走りたいと思ったら、いつでも気軽に来れるような場所になればと思う。